1000年を超えて生きる檜

奈良の都の6割は檜造り

昔の人々は檜のもつ不思議な力を経験的に知っていて、檜をふんだんに使う文化を花咲かせました。奈良時代の都、平城京の6割は檜でできていたといいます。
世界文化遺産に指定された法隆寺は、607年(推古15年)に推古天皇と聖徳太子が奈良・斑鳩(いかるが)の里に開いた寺。その五重塔は建立から1300年以上を経て、今もなお建ち続ける世界最古の木造建築です。それを可能にしたのが檜でした。

千三百年も世界遺産を支える檜の強さ

日本を代表する寺院の法隆寺は、世界最古の木造建築。考えれば、飛鳥時代の木造建築が今も残っていることは驚きです。その佇まいに千三百年という時間の重みを感じることができます。西院伽藍には、圧倒的な迫力で五重塔と金堂が並んで建っています。この金堂にある立派な一枚板の扉は、飛鳥時代の檜だとか。法隆寺がこれほど長い年月を耐えて残った理由は、檜を使っているからだといいます。そして奈良に多く残る歴史的建造物のどれもが、やはり檜で建てられているそうです。

法隆寺

聖徳太子と推古天皇が7世紀初頭(西暦607年)に創建。日本の世界遺産第一号。境内は西院伽藍と東院伽藍に分かれ、国宝・重要文化財の建築物は55棟に、所蔵する宝物は2300余点に及びます。

伐採してから1300年後も生きている檜

昭和の法隆寺の大修理では、全体の65%が1300年前の檜をそのまま使うことができました。取り替える必要があったのは、わずかに35%でした。この大修理のとき、垂木などの軒を支える檜材は屋根の重みで曲がり、垂れ下がっていましたが、上に載っていた瓦や屋根土を降ろしたところ、徐々に木が上がり始め、数日後には元の姿に戻ったという話です。修復に携わった名棟梁の故西岡常一さんによれば、その表面をカンナで削ると、檜独特の香りを放ったといいます。

檜の強さの秘密

檜は厳しい環境の中で生き延びてきた木です。緻密で強靱な特性を持ち、湿気やシロアリにも強いことから「木の王様」とも呼ばれています。曲げ強度や圧縮など、檜の強度を調べると、伐採直後から強度が増し、約200年後にピークを迎えます。それから徐々に強度は低下しますが、1200年を経過しても伐採直後の強度を維持するといわれています。
参考文献:『法隆寺を支えた木』西岡常一、小原二郎著、NHKブックス